糸井重里さんのこのコピーを選ばせていただきました。

昨年、糸井重里さんと仲畑貴志さんのコピー展が鎌倉・佐助のアピスとドライブで開催されました。コピー年鑑に掲載されている糸井重里さんのコピーの中からひとつ選び、それについてしたためる機会に恵まれ、知っている人が少ないと思われるコピーを選んでみました。ラストだけ自分のトーンで。

【選択した糸井重里さんのコピー】

1987年コピー年鑑掲載

服部セイコー

『コップ一杯の水のような。』

37年前。我を強く主張する広告の海の中で、凪のような雑誌広告に目が止まった。『コップ一杯の水のような。』そんな人でありたい。そんな人が好きだ。そう思った。セイコースピリット。とてもシンプルな1万円台の時計。穏やかに時を刻んでくれるだろう。入社1年目のひよっこコピーライターの腕で、悪戦苦闘を静かに見守ってくれた。糸井さんは萬流コピー塾の師であり、人生の師であったが、それが糸井さんが書かれたキャッチフレーズであることは知らなかった。外国製の時計に目移りすることもなく、今でも僕の腕でゆったり時を刻んでいる。主張しない強さ。一歩下がって。1981年のJ.PRESS『ぼくと一緒に歳をとる服。』も、僕の中で同じ地平にある。コップ一杯の水のように、ぼくと一緒に歳をとっていく時計。さて、僕は誰かのコップ一杯の水になれているだろうか。水の中にボウフラとか浮いていそうだな。

                               (小林秀雄)

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