先日の新プロジェクトX「廃校寸前からの逆転劇~高校生と熱血先生の宇宙食開発~」には考えさせられることがいくつもあった。福井県立小浜水産高等学校は、当時生徒が授業中に床で寝ている、化粧をしている、休み時間に喫煙している学校だったという。
生徒たちが唯一楽しそうに誇りを持てている時間が、地元の人たちに学校の名物サバ缶を売るときだった。地元の人たちも浜水を煙たがる部分もあったのだが、その時は長蛇の列ができこのサバ缶はおいしいと言ってよろこんでくれる。
新任の熱血教師が生徒たちを学外授業に出そうと計画した時、他の教師たちは生徒を学外に出すと問題を起こすと難色をしめした。しかし、ベテラン教師が賛同し、市場で漁師さんたちとともに実習をすると、生徒たちは積極的に動き底知れぬコミュ力を発揮したのだった。人は自分の存在価値を認識することで自信をつけていくものだ。偏差値一辺倒ではない教育の大切さを考えさせられた。
自主的に動く生徒たちは地元に大量に発生し大きな害をもたらしていた巨大くらげを煮て粉末にすることを思いつき、それで賞を獲得する。やがて学校の誇りである生徒手作りのサバ缶を宇宙に飛ばしたいという夢につながり、高校生たちが宇宙食開発に挑んだ。その夢は15年後に実現し、JAXAが定める認証基準をクリアするのはとても難しく食品メーカーでさえ困難を極める宇宙食サバ缶をついにつくりあげた。
ラストに登場した浜水を廃校から守ろうと尽力した、にしのひかるさんの言葉が響いた。「地方は過疎でどうにもならないといいますけれど、ほんとに中学高校で地域といろいろやって一緒に解決した子どもたちは、(地元に)帰ってきたいっていいますし、帰ってきたい子どもをつくっている、その教育をしていれば絶対帰ってくるし、だぶんのこの教育が日本の地方を救う教育だと私は確信しています」
多くの地域が地元から出ていった人に戻ってきてもらおうと、補助金を出したり、子育て環境や就職についてアピールすることが多いのだが、にしのさんの発言にあるように、中学校、高校時代の地域との交流やともに成し遂げてきたものがずっと心の中の宝物になり、それが戻りたいという力になるという考え方は真実でとても素晴らしいと思う。Uターンは1日にして成らずかもしれない。