小学2年生の頃だと思う。叔父がハワイに行ったおみやげに、空気の缶詰をくれた。興奮した。ハワイの空気なんだから、きっとバスクリンみたいな香りがするに違いない。すぐに開けてしまってはもったいない。何年も心を躍らせ6年生になった。
もういいだろう。時は来た。
今のようにパカッと開くタイプではない。穴から漏れる空気をすべて吸い込むように鼻を近づけ、缶切りでぎこぎこ。まだ何の香りもしない。もしかしたら、下の方に香りが沈んでいるのかもしれない。手を早め、ついに全開させた。
パカッ!
むっ、何の香りもしない。ハワイの欠片もない。ただの空気だ。ああ。その時に初めて人生の無常を感じた気がする。