高校の古典の教師は、極度の神経質、怒り症で恐れられていた。迷惑な話だ。古典の時間が憂鬱だった。どうやって席順を決めていたのか忘れてしまったが、その時は教師の机の真ん前だった。西行の旅は命がけであったことを語った後、なぜかこういった。
「早朝に旅立つことを朝だちという。朝だち!朝だち!朝だち~~~」
最後は相撲の呼び出しの口調になっていた。それがツボにはまってしまった。笑わないように口を左手で押さえ、右手で足をつねって我慢した。授業が終わるとつねったところが紫色になっていた。それほど強くつねらなければ我慢できなかったのだ。
あの教師は今何をしているのだろう。まだ存命だったら会って話をしたい気もする。